『喫茶めいびい』は、創成川と札幌ファクトリーの中間にあり、古くから近くで働く人たちのランチや憩いの場として愛されています。
一人で切り盛りする本田里美さんは、北海道フードマイスターであり、野菜ソムリエでもあります。その確かな目で選んだ「おいしい野菜」を札幌からあまり遠くない長沼・由仁・江別・当別などの農家から仕入れ、平日のランチなどに食材として使い、毎週末は店内をファーマーズマーケットとして販売しています。
本田さんからよく聞くのは「残さない」ということ。ランチはメインメニューに加え、おいしい野菜をふんだんに使った総菜のバイキング。「残さないように盛ってください」。
狭い店には週末のマーケットの在庫はおいていない。「残さないように仕入れているから」。
もったいないとは少し違う「いたましい」という北海道弁を感じるような思考でカフェと市場を運営しています。
ランチメニューは奇をてらったものではなく、フツーの家庭料理をちょっとうすめのフツーの味付け。でも、フツーより美味しいのは本田さんの確かな目と舌の妙技だと思います。
喫茶めいびい
札幌市中央区北3条東3丁目1ー29酒井ビル
平日ランチ/11:00〜15:00
土・日[さんさん市場]/10:00~18:00
街の小さな喫茶店の冒険*……3年前(2013年)の地元紙(北海道新聞)の夕刊コラムに書かせてもらった原稿(草稿段階と思われますが)です。掲載されたものと大きくは違っていないと思います。
掲載から3年が経過して、今日の隆盛ですので、昔を知る意味でも参考までに以下に紹介させてもらいます。
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運んだのか、運ばれたのか。ともかく縁あって昨年、20年以上も営業している小さな喫茶店を初めて知った。知人が、店の定休日を活用して「日曜産直市場」を開催するという。「こんなことやってま~す」という知らせにノコノコと出かけた。
8~10月の3カ月間、午前10時から午後3時まで、合計13回。かなりのこだわりをもった生産者の手がけた野菜、米、ジュース、乳製品、果実、昆布などの道産品が店内にあふれ、ポストに入れられたチラシで開催を知った近所の客もあふれた。アイデアには店主も協力し、喫茶店の自家製サンドイッチや、お彼岸にはおはぎも販売した。日傘を手にした老婦人が開店を待てずにドアを開け、値札付けなどに忙しいスタッフに商品説明を求める。「もう少し待っててね」が通じない。開店後1時間がピークだったという。
3カ月の冒険を終えた主催者の感想は、「近所のマンション住まいの高齢者たちは、出かける場所を求めている」。週に1回、昔懐かしい対面販売を思い出して、日常の食材をオマケしてよ、と値切る会話も愉しめる雰囲気は、ハレの空間と時間の提供だったかもしれない。
ここは札幌市中央区北3東3、近くには昔風銭湯もある。良い雰囲気を保っている街空間は、失ってから懐かしむのではなく、あるうちに大切にして、景観の奥行きを見つけたい。季節限定市場を引き受け、このような街に住むことが、人間らしい生活テンポでは? と気づかせてくれた喫茶店「めいびい」さんに感謝したい。
2016年10月16日、日曜日、快晴の札幌。「めいびい」さんに出向きました。すると、店内に「本当に美しい緑色の葉」をタップリとつけたダイコンが出番をまっているかのように並んでいました。思わず、葉に触れてしまいましたが、その柔らかい感触は、「美味しいんだろうなあ」と思わせるものでした。
店主のHさんは、北海道フードマイスター、野菜ソムリエの肩書きをもっているのですが、「これはお客さんが喜ぶでしょう?」とお聞きしたら、「それが、葉はいらない!」っていうお客さんもいらっしゃるんです。さらに「葉に虫がついている可能性があるからいらない」という理由で「葉はゴメンさない」というケースもあるとか。養老孟司先生なら「脳化社会」の症状ですネ、とおっしゃるかも?
このダイコンを育てて、納品している方は、札幌で長く、農業“も”営んでいらっしゃるGさん。篤農家としても有名なGさんは、無農薬栽培の証明書にもなりそうな葉についた「かたつむり」の存在が、忌み嫌われるのは、イヤハヤ……と苦笑するばかりかも知れません。